国民の利益とは無関係に利権誘導で動く政治や公務員の相次ぐ不祥事への怒り、時代の閉塞感やつもりに積もった財政の赤字、少子高齢化社会への急速な変化などによる将来不安などが渦巻き、鬱屈した国民の気持ちにむけた時代劇でした。小泉さんの『改革』という水戸黄門の印籠、また「殺されてもかまわない」という覚悟の潔さ、悪代官よろしく郵政族を追い出し、また刺客をはなって懲らしめる舞台設定などの巧みな演出によって自民党支持への圧倒的なエネルギーが生まれ、雪崩を打ったように自民党大勝の結果となりました。時代劇は、黄門さんが最後に勝つに決まっているのです。

マーケティングの世界では、マーケットがまるで小選挙区制度のように、トップでないと生き残れない時代になったといわれてきましたが、むしろ今回の衆議院選挙は、小選挙区制度はマーケティング、特に競争戦略の巧みさ、また拙さによってドラスティックに結果が変わることを見せつけたように思います。
今回の選挙は、小泉さんの選挙戦略の成功という一方で、民主党が迷走し、自滅していった選挙でした。選挙は最後の3日で変わるといいますが、終盤になるにつれ小泉さんが冴え、岡田さんは選挙区を回るたびに逆風を感じたのか、危機感が募り、焦りを見せていました。小泉さんの舞台を際だたせる脇役を演じる存在でしかなかったように感じます。
民主党を立て直し、政治の拮抗力をつくらないと、日本は大政翼賛会が握るのような構造になってしましい、やがてそれが暴走や腐敗を生み出すこともなりかねません。健全な政治のメカニズムを失うことになります。
岡田代表をはじめとした執行部ののマーケティング・センスの悪さを嗤うだけではすみません。しっかり立て直しをやって欲しいものですが、果たしてこの惨めな敗北に耐え、再建できるのでしょうか。パニックに陥り、分裂、脱落、抗争に走るという最悪の事態に陥ることすら考えられます。
民主党の立て直しはきっと日本の将来がかかっていると思うのでそういった危機感、また自覚を望みます。実際のマーケティングの世界では、ドラスティックなシェアの変動が日常茶飯事のようになってきているので、民主党さんはマーケティングの世界を学ぶと元気がでるかもしれませんよ。

これで与党は絶対安定多数の議席を得たわけで、国民、また経済界が望む改革の速度をあげる基盤ができたことになります。またそれが公約だったわけで、もし期待にそぐわないと、つまり、マーケティングで言う顧客満足、国民の満足や経済界の満足が得られないと、次回は逆に雪崩を打ったように敗北するということを当選した議員さんたちは肝に銘じて欲しいのです。有権者は自民党を支持したのでも、郵政民営化の法案の中味に賛成したのでもなく、『改革』を支持したのですから。
さまざまな政治課題に対して『改革』は加速されることを期待しますが、参議院はいまだに族議員の巣窟であり、追い風で当選した議員さんたちで水太りした自民党が、自らが抱える族議員と霞ヶ関の役人という魑魅魍魎の魔物たちとどれだけ対決できるのかが見物です。
また、水清ければ魚棲まずかもしれませんが、小泉さんの巻き起こした自民党に対する強力な追い風によって、怪しげな人びとまでもが禊ぎを済ましたとばかりに復活したことはいかにも気持ち悪いですね。それに落選したはずの人がゾンビのように復活して、当選を祝う姿には違和感があります。あきらかに選挙制度の歪みです。

しかし、なんと言っても、投票率が高かったことは評価したいですね。国民の政治への関心が高まらないと、政治への監視の機能が働きません。政治に対する無関心が、組織票で動く政治、小泉さんが叫んだように、一部の利権集団で政治が左右される状況をつくってきたのですから。

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