魅力ある製品やサービスが、多くの人びとを引き寄せ、大きなマーケットを生み出すことはいうまでもありません。
しかし、今日、生活者の人びとの個性化が進み、消費も高度化してくると、それぞれで、ニーズやウォンが違ってきます。
逆に言えば、それだけきめ細かな製品やサービスが供給されるようになってきたともいえます。
マーケティングの流れで見ると、まず、高度成長期のように、製品の普及が主なテーマであった時代は、できるだけ多くの人びとに人気のでそうな製品づくりが重要でした。家電でいえば、ひとつの機種に集中してマーケティングを展開したほうが効率的でした。
しかし、モノがあふれてくると、より高度なニーズやウォンツを掘り起こして、買い替えを促進するという段階に入ってきます。
買い替えでなくとも、「わたしにぴったり」な製品を提供することが、より効率的なマーケティングになってきました。
そうなると、生活者を、ひとつの塊ではなく、なんらかの共通点をもったグループにわけて、よりきめ細かな魅力ポイントを作っていくわけです。それをセグメンテーション、つまり市場の細分化といいます。
さらに情報技術や生産技術が進んでくると、だんだんセグメントがよりきめ細かくなり、時代の流れは、ONE TO ONEマーケティングに向かってきています。例えば、DELLコンピュータは、どのような仕様にするかをインターネットで選べば、それこそマイコンピュータが届けられてきます。
こういった分散化、細分化が進んできているにもかかわらず、魅力あるコンセプトや価値をもった製品は、大きな市場を切り開いていきます。セグメントの垣根が崩れ、どんどん多くの人びとをまるで引き寄せるようにして市場で存在感のある商品になっていきます。
しかし、かつての誰にも好まれる、ひろく浅くのマーケティングでは、そのように人びとを引き寄せることはできません。
重要なのは提案性です。なにか新しい生活のシーンが生まれてくる、新しい生活が広がってくる、そういった共感をともなう強力なコンセプトが必要です。
マーケティングも、それだけに映画や音楽と同じように作家性が求められる時代になってきているのかも知れません。
磁力のマーケティングは、ある意味で「この指とまれ」というマーケティングなのでしょう。