私たちのオフィスの近くに、千里山という高級住宅街があります。ここは、エトワル広場から道路が放射線状に広がるパリの街を模して開発されたそうです。聞こえはよいのですが、起伏があり、道が狭いため、一方通行規制も多く、知らずにさ迷い込むとなかなか抜け出せない、まるで迷路の街です。きっと上空から眺めれば、狭い地域ですから、何でもないに違いありません。迷路とはそんなものだと思います。
しかし、それが森であれ、何であれ、迷路にさ迷う旅人は、いつか、出口のない世界にはまってしまったという不安、焦り、絶望感に襲われるに違いありません。パニックになると、それまで道中を共にしていた人たちの間にも、心の亀裂が起こってきます。お互い、不信感をいだき、罵り合うようになりかねません。今、マスコミを始め、政治家も、経済の評論家も、多くの人たちが迷路にはまり込んだ、そんな旅人状態になっているように思えてなりません。集団ヒステリーの状態です。
今でも、しょっちゅう、この千里山界隈で、道に迷ってしまうのですが、特に焦りもしないし、不安にもさいなまれないし、絶望することもありません。それは、私は、確かにこの一帯は、迷路に違いないけれど、どこかに進んでいけば、やがて、抜け出せることを知っているからです。これが千里山界隈でなく、本当の迷路だったとしたらどうでしょう。それでも、絶対抜け出せると信じて、道を探るか、絶望の余り、座り込んでしまうかで結果は違ってくるはずです。
未来への希望を失った社会も、人間も、そのとたんに老いてしまいます。どうすれば、明日を、よりよく迎えることができるかという創造的な思考を停止してしまうからだと思います。逆に、創造的にものごとを考えるためには、未来への確信、絶対に、この問題は解けるという信念が必要だということでしょう。
未来への確信はどこからくるのか。それは、どんどん辿っていくと「夢」だと思います。それぞれのひとびと、それぞれの社会、それぞれの時代が描く「夢」です。私たちのような、スモール・ビジネスは、時代の変化の波に翻弄される木の葉みたいなものです。何の保証も無い世界で悪戦苦闘しています。いつ沈没してもおかしくない。でも、夢だけは捨ててこなかった。だから、幸運なことに、いまだにチャレンジの機会が残されています。
まずは、自分自身の「夢」から描いてみましょう。時代は、創造的解決を求めています。だから、創造的な生き方やビジネスが成功するのです。「夢」を描くと、考え方も生き方も、創造的になってきます。景気談義は、そろそろ止めにして、明るく「夢」を語り合いましょう。やることがいっぱい見つかるはずです。