「手に職をつける」というとなにか職人さんや技術者の世界のような感じがします。しかし、勤め人の世界、つまり普通のサラリーマンの世界にも「手に職」があるとビジネスピープル共和国ヨロンさん「『手に職』って何なんだろう」でおっしゃっています。
「手に職をつける」ということは「何かその分野で食っていける技術を身につけるといったような意味でしょうか」と書いていらっしゃいますが、つまり「どこに移籍しても通用するスキルを持っている」ということだと思います。つまり「ポータブル・スキル」があるということです。そういったスキルが大切だということをヨロンさんも転職されているので身にしみておわかりなのだと思います。
「ポータブル・スキル」とカタカナで書くと新しいようですが、これが案外古くからある「手に職」の世界の常識です。古い歌なので若い方はご存じないと思いますが、1960年に流行した藤島恒夫の「月の法善寺横町」で、「包丁一本晒(さらし)に巻いて、旅へ出るのも板場の修行」とあります。
修行の旅に出て一人前になって帰ってくるので待っていてねと恋人のお嬢さんに訴える十二村哲作詞の歌ですが、職人は旅に出て、新しい職場でも雇ってもらえる腕があるという意味だけでなく、さまざまな師匠のもとで働き、腕を盗むことで一人前になっていくと言う世界が描かれています。
ポータブル・スキルというと、すぐになにかの「資格」をとることだと思い浮かべる人もいらっしゃいますが、ちょっと待って欲しいのは、それだけではないということです。資格も結構なのですが、能力があっても「資格」は持たないということはいくらでもあります。たとえば、世界的な建築家で、ハーバードや東大でも教鞭をとってこられた安藤忠雄さんは、大学も出ていらっしゃいませんし、一級建築士の資格も持っていらっしゃらなかったほずです。それに資格というものがない仕事だっていくらでもあります。
忘れてはならないのが、仕事の中で、どう振る舞うのか、あるいは振る舞えるのかという行動の仕方です。それが優れていなければ新しい職場に受け入れてもらえるとは限りません。優れた仕事をする人の行動の仕方を「コンピテンシー」といいますが、それは優れた人たち、優れた職場で盗んでくるものだと思います。板前の修行もたんに料理のレパートリーが増えるというだけでなく、親方のさまざまな行動の仕方、さまざまな出来事にどう対処しているのかを学ぶということも含んで、店を切り盛りできる一人前になっていくのでしょう。時代は変わっても、仕事の種類は違ってもその本質は変わりません。

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