2005年06月13日

ビールの文化を楽しむならベルギービールがいいね。

禁断の果実


「禁断の果実」
ルーベンスの絵画「アダム&イブ」を下絵にしたラベルデザインのベルギービール「禁断の果実」。ベルギー・ビールは個性の宝庫です。


いろいろ「第三のビール」についてブログで議論されていることを知りました。嗜好と同じよううに「ビール」については、いろいろな意見があるとは思いますが、サッポロ「ドラフトワン」から始まり各社が追撃している第三のビールがどうも王道ではないと怒っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
ジャーナリストである団藤さんは「ブログ時評」「食文化に背を向けたビール業界の悲劇」[ブログ時評25]で、ビール業界はこの第三のビールを「全く新しいアルコール飲料」と主張しているけれど、結局は代用ビールであり、自ら築いてきたビール文化を貶めている」というご批判をされており、また大麦を捨てた「第三のビール」は、業界の将来を自ら危うくするという懸念を表明されています。
しかしちょっと疑問に思ったのは、日本のビール文化っていったいなになのかということでした。それはもともと「味わう」という類の文化ではなかったのではないかという疑問です。


日本のビール業界は、大きな企業が工場で大量生産することを前提としたマス・マーケティングの典型的な世界です。その点で、ほとんどが中小企業である清酒や乙類の本格焼酎の業界とは違います。会社が大きいだけに、開発力もあり、戦略オプションも多く、それしかできないから、その味を追求するという世界ではありません。
昔から人びとの嗜好にあわせて、コーンスターチや米粉をいれてコクをだすという独特のビールであり、しかも味わうことなどできないぐらいキンキンに冷やして、ごくごくと飲む日本独自の飲み方でした。
やがて、人びとの多くが「味わい」よりは「のどごし」を重視していたことがアサヒのドライの大ヒットで証明されますが、そうなると、パンドラの箱が開いてしまったようなもので、発泡酒であれ、第三のビールであれ、後は価格次第、「のどごし」次第となるのは自然な流れです。

日本のビールは「味わう」というシーンがほとんど浮かんできません。みんなで「乾杯!」といって仕事の労をねぎらう集団の文化、一気のみの新人の歓迎会といった景気づけの文化、まあ選ぶよりは、とりあえずはビールという文化、帰宅して疲れを忘れるための気分転換、ゴルフ場でのどの渇きを潤すなど、浮かんでくるのはアルコール清涼飲料の文化ばかりです。もっといえばじっくり味わうようなシーン、例えばバーでは合わないビールがほとんどなのです。
もともと日本のビールは、醸造所の個性、銘柄の個性を楽しむという文化とはほど遠かったのではないかと思います。だから「第三のビール」で貶められるというほど大げさな文化があったのかという疑問を感じるのです。
「ビールの味」のバリエーションをほとんど知らない人たちが、より安く、よりスッキリしたのどごしのよいアルコール清涼飲料を求めても当然であり、そういったところにメーカーが新製品を投入してくるのは正当なマーケティングだと思います。多くの人たちが、「発泡酒」も「第三のビール」も別にいやいや飲んでいるわけでなく、安くて、ご自身の味覚にあうから飲んでいらっしゃるわけであり、新製品の味の好き嫌いを語ることは楽しくていいのですが、そのマーケティングを非難してもしかたないことだと思えます。

では「味わう」ビールの世界が日本にないかというと決してそうではありません。日本は豊かな国です。ビールの味わいを楽しめる世界、ビールの個性にあわせた飲み方をするという食文化が楽しめる世界は、ちょっと探せば地ビールや輸入ビールで体験することが出来ます。
とくにベルギービールはその代表格で、種類の豊富さは日本酒に匹敵するぐらいあるのではないでしょうか。「リーフマンズ・グリュークリーク」のように暖めて(つまり燗をして飲む)ビールだってあります。
ベルギービールの輸入に力をいれていらっしゃる「白雪」小西酒造さんの「小西ベルギービールホームページ」はベルギービールのそれぞれのブランドの特徴やおいしい飲みかたが詳しく紹介されています。文化とはそう言った豊かな選択肢、個性にあわせたおいしい飲み方の作法があってはじめて育ってくる世界ではないでしょうか。
そういったビールは、日本の地ビールも含めて、今はニッチな小さなマーケットでしかありません。でもそれでいいのだと思います。最近の若い人たちは大量にビールを飲むという人は減ってきているので、やがてビールの味わいを楽しむ世界もすこしずつ広がってくるように思います。
もうビールのマス/マーケットは、競争で各社の売り上げやシェアが動くことはあっても、これ以上市場そのものが伸びることはないでしょう。マスマーケットのビールがどんどん衰退しても、それに変わる文化の世界はいくらでもあるので、それでいいのではないでしょうか。特に嘆くほどの価値があるとはとうてい思えません。
文化を語るなら、出荷量はあまり参考になりません。清酒がだめになったと団藤さんはおっしゃっていますが、そうは思いません。いまだにしっかりおいしい清酒をつくり続け、清酒文化を支えている蔵元はいくらでもあります。またそれを楽しんでいる根強いファンもしっかり存在しています。清酒業界は大手ですらほとんどが中小企業ですから、逆にそういった文化のビジネスをやっていけるのかもしれません。



人気blogランキング に、このブログを登録しています。




トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. ビールの秘密  [ ヤースのへんしん ]   2005年06月13日 21:44
ブログ「大西宏のマーケティング・エッセンス」さんの最新エントリー『ビールの文化を楽しむならベルギービールがいいね。』を読んで、思い出したことと、考えていたことを書きたいと思います。 アサヒビールから「
2. 第3のビール  [ PowerRhesus(in vitro) ]   2005年06月13日 23:41
"ビール"というものに爽快さと酔う機能しか求めていない一般大衆の大半の日常にマッチする商品開発と言うマーケティングが功を奏した。 一般大衆も特別な日には特別な酒を飲むだろうし、 ボーナス月にはエビスを1ケース買うかもしれない。 でもほとんどの日常はただ
3. 下戸の意見  [ サメ屋つね ]   2005年06月14日 18:04
私は安売り用アルコール飲料の開発販売には反対です。「酔えればいいや」的発想で、アルコール依存症の方を増やすばかりだと思うのです。大西さんが仰るとおり、日本には「ビール文化」というものが根付いておりません。確かに、消費者のなかにはこの雑多なもののなかから...
4. ビール  [ の村のチャンネル ]   2005年06月14日 22:16
 昨日の「大西宏マーケティング・エッセンス」でビールについて書かれていました。ビールに関しては一家言あるようで無い私ですが、ビール好きなんです。スーパードライが好きですね。でも大体2杯くらい飲んじゃう
5. 食文化にもジャーナリズムにも契約関係が  [ ブログ時評 ]   2005年06月15日 00:08
 最近、一人で酒を飲む時のファーストチョイスは、ざる蕎麦と吟醸酒の組み合わせになっています。会社の川向こうにある古い老舗ビルの地下に降りて蕎麦屋に入り、吟醸酒の銘柄で注文すれば期待した通りの味が出てきます。清酒のナショナルブランドには問題があると感じても
6. 関西ウォーカーで紹介されました〜その1〜  [ 美味しいブログ 【Delicious Blog】 ]   2005年06月15日 10:04
本日、6月7日発売の関西ウォーカーで 「美味しいブログ」が紹介されています ( ̄ー ̄) なんか、似顔絵付きらしくて・・恥ずかし。。。 めっきり暑くなってきたこの季節。 ビールが美味しいですよね〜〜〜。へへへ。 今回の関西ウォー
7. 関西ウォーカーで紹介されました〜その2〜  [ 美味しいブログ 【Delicious Blog】 ]   2005年06月15日 10:04
昨日に引き続いてベルギービール特集です (^0^) 【ウエストマール・トリプル】 オンゼリー・ヴェヴロウ・ヴァン・ヘイルグハルト修道院 (舌、か、かみそう・・・) のウェストマール醸造所で作られたビール。 色はピルスナーと似たよ
8. その他の雑種(2)は文化を創るか  [ とっくりばー ]   2005年06月15日 12:33
ブログ時評の団藤さんがその他の雑種(2)やどんどん味の薄くなってきた日本のビールに「ビール文化」の衰退を嘆いておられた。たしかにビールは結構変化している。もっとも、僕はスーパードライ以前は未成年だったため、昔のキリンとかをよくは知らないけれど。 大西 宏の
9. 「ビールのようなもの」ではなく  [ mishimax.net ]   2005年06月15日 23:41
 おそまきながら「大西 宏のマーケティング・エッセンス:ビールの文化を楽しむならベルギービールがいいね。」に反応してみる。というか、今日は暑かったのでビールが飲みたくなっただけなんだろう…。 「ビール...
10. ♪熱い夏にはこいつがお薦め  [ あざらしサラダ ]   2005年06月19日 10:16
●ちょっと出遅れてしまいましたが、団藤さんや大西さん、ヤースさんまでビールの話題で盛り上がっていたようです。 ○食べ物は「文化」で、皆さんそれぞれのこだわりや考えがあり、ある意味宗教のようなものかも知れませんね。  しかしまだ梅雨入りしたばかりだと
11. ♪熱い夏にはこいつがお薦め  [ あざらしサラダ別館 ]   2005年06月19日 10:17
●ちょっと出遅れてしまいましたが、団藤さんや大西さん、ヤースさんまでビールの話題で盛り上がっていたようです。 ○食べ物は「文化」で、皆さんそれぞれのこだわりや考えがあり、ある意味宗教のようなものかも知れませんね。  しかしまだ梅雨入りしたばかりだと
12. ビアガーデンに喝!(BY T)  [ スーパーOL達による『幸せプロジェクト』 ]   2005年08月01日 11:34
ビアー好きの私。 今年初のビアガーデンに行って参りました。 「森のビアガーデン」 http://www.kirin-dining.com/beer/mori-garden.html です。 ビアーガーデンは、どこもかしこも ・ビール、まずい ・おつまみ、まずい ・席が汚くて落ち着かない ・トイレが汚...
13. We love “Belgian Beer”!!  [ Life with No Name ]   2005年08月21日 07:12
  あんなこんなで、すっかり日にちも変わりまくってしまい・・・  一昨日に、リアルでお届けしたかったのだけど、  私の力不足で、今頃のエントリーになったことを悔やむばかり。  さて、金曜はどこに行ったのかというと、  大好きな&仲良しな 会社の同期 で結成...
14. ビールと発泡酒ってね  [ 塩玉極私的徒然通信 ]   2005年10月25日 00:04
あたいは大の酒好きです! でもね、節約生活をかれこれ半年ぐらいしてるんですが、、、 そろそろ、ビールから発泡酒に変えろという指令が下されました。がーん。しょぼんすわ。 ↑やっぱねーえびすをつくってるサッポロの黒ラベルは最高っす! ぶっちゃけ、ビー...
15. ビールはB級品? ビールの起源を求めて  [ 脳内新聞(ブログ版) ]   2005年11月08日 00:58
 ラムネという飲み物をご存知だろうか? 若い人にはピンと来ないかも知れないが、ビンの中にビー玉が入っている、あの飲み物である。  しかし本来の意味ではラムネのビンの中にはビー玉は入っていない。入っているのはA玉(ラムネ球)と呼ばれる玉である。現在ビー玉と呼ば
16. ベルギービールの衝撃  [ アサヒビール極上情報【アサヒビールが一番!】 ]   2007年02月16日 00:53
こんばんは!トラバです('??`)ビールが大好きなホイメンっす。 およそ2年前、大阪・道頓堀のKPO(キリンプラザ大阪)でヴァイスというビールを飲んだとき衝撃でした。今まで味わった事のない香りが鼻から抜けていって苦味もなく、逆に甘みがあって・・初めは、変な味だとっ...
17. 第3のビールとは  [ アサヒビール極上情報【アサヒビールが一番!】 ]   2007年02月23日 21:20
アサヒビール極上情報のホイメンです!第3のビールをしらべてみました。

この記事へのコメント

1. Posted by kondo   2005年06月13日 17:47
私は安いお酒は、翌日に響くと教わりました。エビス好きです。

で、話は違いますが・・・・。
今までの日本では、車社会に有りながら飲酒運転
なるものが軽んじて扱われていたような気がしま
す。郊外にある居酒屋に大きな駐車場とか、少し
くらいならという気持ち、未成年者に対する販売
対処などなど、課題をどうこなしてきたのか?
味わいのお酒文化も好きですが、複雑ですね。
2. Posted by ヤース   2005年06月13日 21:46
こんばんは、ヤースです。
「題名」を入れずにエントリーしてしまい、TBしてしまいました。
誠に申し訳ございませんが、「題名」の無いほうの削除をお願いいたします。
今度、ベルギー・ビールを飲みましょう!
・・・冷酒も?(笑)
3. Posted by N−B   2005年06月13日 21:51
はじめまして。
ベルギービールの話題が出ていましたので、どうしても書き込みしたくなりました。ビール好き、特にベルギービールとドイツビール好きなので。
世界のビールと比較すると、日本の(大手メーカーの)ビールの味わいは中庸だと思います。元々「中庸」ですから、程ほどの範囲の違いを楽しむことに繋がり、そうすると、新鮮味は大きなウリとなるはずで、ビールメーカーさんが多様な新製品を出すことは、「自ら築いてきたビール文化を貶めている」わけではなく、団藤さんの意見は少々的外れだと感じています。
団藤さんも、大西さんのブログを見てベルギービールをよく飲むようになれば、「大麦麦芽じゃなければビールじゃない」なんていう意識が変わるかもしれません(笑)。個人的には、「ブーン フランボワーズ」をオススメしたいですね。
4. Posted by つきっつ   2005年06月13日 23:51
以前住んでいた家の近くに小さな酒屋さんがあり、酵母が生きていて少し濁ったビールを置いていました。1リットルほどの瓶で、1か月に1度、4、5本のみの入荷。
少し高いのですが、なんとも深い味があり、訪ねてきた人に出すと必ず喜ばれました。
冷蔵庫から出して少し置いてから飲んでいましたが、そんな私も最近はキンキンに冷やした「第3のビール」で暑さと戦って(?)います...
5. Posted by 大西宏   2005年06月16日 17:15
海外からのスパムコメントを消していたときに、手が滑って、最後にいただいたコメントを削除してしまいました。
ショック!
ごめんなさい。申し訳ありません。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔