かつての高度成長期には松下電器の強みであった系列店は、最初から一定のロットを稼げる保証ともなって商品開発を甘くする原因となったり、またその足かせがあって量販店対策に遅れるなど、松下電器のアキレス腱だといわれていたのですが、時代の変化というのは皮肉なもので、いまやその系列店が、再び松下電器の強みとして浮上しはじめてきています。
家電の「高級化」や「デジタル化」が進んできて、設置にしても使いこなしにしてもユーザーにとって難しくなってくており、家の中にまで入っていってお世話するというサービス、お客さまとの深いつきあいを追求してきた専門店が強みを発揮できるようになってきたことが原因です。
WEDGE6月号に詳しく特集されていますが、松下電器は、系列店を絞り込み、またさらに改革の目玉であり03年から導入したスーパープロショップ(SPS)制度が効を奏しはじめており、SPS5000店の6割が04年には二ケタ成長を遂げたもようだそうです。
たしかに、PC、プリンター、DVDレコーダー、大画面の薄型テレビ、ホームシアターなどを揃えてくると、設置時の配線そのものにしてももはや素人技の域を超えてきています。とくに高齢で富裕な人たちは、すべてお任せで設置してくれるお店で頼もうと言うことになります。それだけなら、家電量販店でもサービスでやってくれるところもあるでしょうが、使い方が分からない時に、気軽に教えてもらえるなじみのお店から買えばなおさら安心です。商品の「高級化」や「デジタル化」が、お店の”サービス”を生かすチャンスになってきたということでしょう。
松下電器の場合、専門店が4割程度を売っており、1割強という業界水準をはるかに上回っています。高額なプラズマテレビでは6割を専門店が売っている状況だそうです。
お互いの激しい競争で、ひたすら”価格”に走っている家電量販店ですが、”価格”では、お客さまが価格ドットコムで価格を比較するのがあたりまえになってきており、そのことがますます価格競争に拍車をかけるようになってきています。結局は規模の小さな量販店は統合するなりしてバイングパワーを上げ、仕入れ値を下げさせないと競争には勝てません。当然淘汰の流れがこのところ激しくなってきたことはいうまでもありません。
さて、家電専門店ですが、ガスと電気のエネルギー競争が激化してきていますが、シニア層はリフォーム市場の中心顧客層でもあり、うまくやれば、お客さまに密着してきた強みを発揮して、そういった分野も取り込むことができるかもしれないですね。