今日は、プロ野球を例にとって、マーケティングにとって重要なテーマである『参入障壁』について書いてみたいと思います。

近鉄バファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併問題で、プロ野球界が揺れ始めています。チーム数が減り、パリーグの成立が危うくなるため、1リーグ制への移行が、にわかに俎上に乗せられるようになってきました。1リーグ制は、巨人の渡辺オーナーのかねてからの持論であり、ここぞとばかりに主導権をとろうという勢いです。
ご存じのように、プロ野球、特に巨人のTV視聴率は、年々低下の一途をたどっています。観客動員数も落ちてきました。球団の収入も伸びず、一方で選手の年俸がどんどん上がり、球団経営は決して明るいものではありません。きっとオーナーからすると焦りや危機を感じても当然でしょう。
だから、1リーグ制に移行すれば、1試合当たりの視聴率や観客動員数が増えると考えたくなる気持ちもわからないでもありません。しかし、目先の利益しか考えていないように感じるのは私だけでしょうか。
問題を冷静に眺めてみましょう。なぜ、近鉄が名前を売りに出そうとしたり、オリックスへの合併を選択しなければならなかったかです。そこには、新チームを登録するのに、30億円を支払わなければならないという厳しい『参入障壁』があるからです。『参入障壁』というのは、新しい会社が参加することを困難にするハードルのことです。
このハードルを撤廃して、もっと成長分野の会社にどんどん参加してもらおうという議論がほとんど伝わってきません。プロ野球界に新しい血を入れて、プロ野球そのもの活性化をしようという発想にならないのです。
また、メジャーリーグでは当たり前になった、インターリーグ制というのがあります。例えば、セリーグと、パリーグのチームが、シーズンの間にも、交流試合を組み、その勝敗の結果も成績にカウントするという方法です。この議論も伝わってきません。

いきなり1リーグ制が持ち出されてきたということは、いったん得たオーナーの権益をとことん守りたい、手放したくない、だから、新規参入を許すぐらいなら、チーム数を減らして、一チーム当たりの分け前を増やせばよいという思惑が最初からあると勘ぐられてもしかたありません。ファンの気持ちが忘れ去られているように思えます。マーケティングで言う「顧客志向」ではないのです。

しかも、レギュラーのポジションをとりたい、相手チームの選手よりも、いいプレーをしてチームの勝利に貢献したいという、チーム内外の厳しい競争のなかで生きている選手側と、逆に競争を避けたいというオーナー側の発想は、まるで水と油です。

だから、落合監督はじめ、現場、またプロ野球OBから、1リーグ制では野球が面白くなくなるという懸念を表明する人がでてきたのも当然のことです。

しかし、自由競争な競争を妨げることが長期的に見ればどうなるのかは、日本のさまざまな規制や許認可制度によって守られてきた産業が、時代の変化に対応できなくなり、今や、日本の経済のお荷物状態に陥ってしまったことを、よく考えるべきだと思います。
チームが減るということは、それだけ、活躍できる選手も減るということです。ヒーローが減り、また地元への密着度が減っていきます。限られた地域でしか、スタジアムで観戦できなくなり、結局はプロ野球は遠い世界になってしまうのです。それなら、大リーグのほうが面白いのではないでしょうか。

ついで話ですが、先日、メジャーリーグの試合で、子供のところにきたファールボールを大の大人が力づくで奪うという事件がありました。非難の大ブーイングが起こり、それを見た心優しい少年が、その少年にボールをあげ、その後、対戦チームの選手がボールとバットを、そのかわいそうな少年にゲーム中にプレゼントする光景が映し出されていました。スタジアムには、TVでは体験できない触れあいやドラマがあるのです。

政府や業界が生み出す、新規参入を妨害するための不健全な『参入障壁』は、結局は自らの首を絞める結果になります。長い目で見れば、活発な競争が、新しい知恵を生み、市場を面白くしていくのです。
プロ野球も、このままオーナーの利権が優先されると、下手をするとプロ野球そのものの魅力がなくなっていくという危険な香りを感じざるをえません。

さて、この『参入障壁』も視点を変えると意味合いが違ってきます。マーケティングでは、『健全』な『参入障壁』を考えることが重要です。、せっかく大量の資金を投入しスタートさせた事業に、あっという間に競争相手があらわれ、価格競争が始まると、投資した資金の回収も出来なくなり、なんのために新規事業を始めたのかわからなくなってしまいかねません。
政府の規制という他力本願や、ある意味で談合による規制づくりではなく、自力でつくる健全な『参入障壁』について明日は書いてみたいと思います。

追伸:新幹線から誤って投稿したため、修正ができず、誤字だらけの原稿であったことをお詫び致します。

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