「無菌室育ち」のわに庭さんから、コメントをいただきました。わに庭さんは、三つのブログをやってらっしゃいますが、いつも独特の視点でお書きになってらっしゃるので、ちょくちょく訪問させて頂いています。ただ、コミックの話になってくると、読んでいないのでついていけないことがありますね(笑)。
全くコミックとは無縁だと思われるのはしゃくなので告白しますが、「美味しんぼ」と「ギャラリー フェイク」は愛読していますよ。

さて、わに庭さんからいただいたコメントですが、ライブドアの堀江さんについて、「素晴らしいアイディアでも…実現が堅い、ってとこまで、資金・人材・資源を揃えてからカードを開くんだよ。そういうのを日本じゃ『根回し』と言う」と根回し不足をご指摘です。いくら正しいことであっても、それが受け入れられないと、「結局は二番手が得をすることになる」と、堀江さんの行動や態度に、じれったさのようなものをお感じなのだと思います。
さて、この「根回し」ですが、もともとは「木を移植するに先立ち、根の周囲を切り詰めて細根を発達させておくこと」(大辞林)だそうです。交渉などの「根回し」は、昔からの使われていたのかと思いきや、語源由来辞典によれば、なんと昭和40年頃より使われ始め、昭和40年代半ばに一般化されたそうです。今で言う「根回し」は結構歴史が浅いのですね。それだけ、近年になって、ものごとの交渉が難しくなってきたということかもしれません。
この「根回し」は、ビジネス社会のなかでも結構重要です。マーケティングの世界でもそうだと思います。

なにか新しい切り口を発見したり、今までとは違う方法が必要だと気付いても、結局は社内のコンセンサスが得られないと実行に移されることはありません。企業対企業の取引でもそうです。お客さまのコンセンサスが得られないとものごとは進みません。
従来の製品やサービス、またマーケティングの延長線上で改良を加えるということは、あまり大きなリスクがありません。それは業務のなかの意思決定のルートで十分に動いていきます。リスクが小さいからです。
しかし、新しいアプローチにはリスクが伴ってきます。大きなリスクがあると、日常の業務の意思決定の枠では判断できません。しかも、どれだけリサーチを重ねても、実際には、マーケットはさまざまな要因で動いており、前もって、予測がつかないことはいくらでもあります。絶対に成功するとは誰にもいえないのです。
大きなリスクを感じれば感じるほど、賛成票を投じることにためらいが生じます。誰しも失敗には加担したくはありません。

お互いがリスクを共有するためには、正しいかどうかだけでなく、納得が必要なのです。会社や組織がリスクを背負ってでも、チャレンジすべき価値があるかどうかは、そこに共感がないとなかなか賛同できません。理屈だけで納得できるという人は少ないですね。人は合理性だけでは生きていません。
正しいかどうかということだけでなく、自分の存在を認めてくれているから相談してくらたという満足感、アドバイスすることによって提案を共有しあったという仲間意識、また熱意が伝わり、それなら応援して実現させてあげたいとい気持ちなどがないとなかなか賛成票は投じていただけません。

経験的に言って、いいマーケッターは、いい切り口を見つけ出すだけでなく、社内のコンセンサスを上手につくって実行を促進していける人です。それはプレゼンテーションが巧みなだけでは難しいですね。社内に向けたマーケティングという視点が必要になってきます。「政治」という言葉に置き換えてもいいと思います。
しかし、この政治が案外難しいのです。組織や根回しする相手の癖を知っていないと、間違って根回しをしてしまい、逆効果になることだってありえます。根回しの順序や、ルート、また方法が重要になってきます。新しいアプローチであればあるほど、リスクが大きければ大きいほど、賛否両論が渦巻いてきます。下手をすると相談したとたんに潰されることだってあるのです。
優れたリーダーの人は、この根回しの順序やルート、また相手や方法をいくつもご存じですし、従来の方法では対処できない新しい課題でも、どのような根回しをすることが有効かも考え出す知恵をお持ちです。
そういった人たちも、最初からこの根回しの知恵や技を持っていたとは思えません。きっと、若い頃から、さまざまな新しい提案を行うことにチャレンジし、衝突したり、無念に破れたり、逆に誰かが後押ししてくれて成功したといった体験を繰り返しながら学んでこられたのでしょう。突然できるというものではないように思います。

コンセンサスを得ることは重要です。しかし、それが過度に必要な会社や組織も問題ですね。コンセンサスをとることばかりに労力を費やさないといけない会社や組織は、このスピードの時代についていけません。ただただリスクを小さく分け合って、身の安全を守ろうとする人ばかりになってしまうと会社や組織の活力はどんどん失われていきます。考えられないような些細なことにも、社内のコンセンサスと根回しが必要な会社がありますが、これは会社や組織そのものが老化してしまっているということです。
とはいえ、どんな活力のある会社や組織でも、いかにIT武装しても、また権限委譲を進めても、コンセンサスを得るための「根回し」がなくなることはありません。変化が激しく、従来の常識が通じなくなればなるほど、確実でないことに判断が迫られてくればくるほど、組織的に決定し、動いていくためには「コンセンサス」をつくることとそれを得るための「根回し」も必要になってきます。
報告・連絡・相談の頭文字をとった報連相は、スピードが求められる時代だからこそよけいに必要になってきているように思います。書類を積み重ね、会議ばかりやっていると、市場が変化してしまい、時すでに遅しということだってあり得るのです。
今回のライブドアの堀江さんの行動の是非についてはコメントしません。ただ根回しによってコンセンサスをつくり出していく努力、またその努力の積み重ねで、ビジネスの守備範囲を広げていくことは、私たちにとって重要な課題であることには違いありません。

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